大気エアロゾルには,起源の異なる様々な種類のものがあります。例えば、海塩粒子,土壌粒子,鉱物粒子,硫酸粒子,硫酸塩粒子,黒色炭素粒子などです。
元素組成や化学成分を分析することで大気中のエアロゾルがどのような起源をもって,その場所に来ているかなどの推定,気候変動に対する影響などを評価することができます。
分析結果
福岡市や長崎県大村市の大気中に存在する粒子から水溶性イオンを抽出し,イオンクロマトグラフィーで分析すると,図のように,2.0ミクロンより大きい粒子では,海塩成分である,Na
+やCl
-,鉱物起源と思われる,Ca
2+,人為起源の汚染物質と思われるNO
3-などを主成分としていることがわかります。一方,2.0ミクロンより小さい粒子では,人為起源と推定されるSO
42-やNH
3+がほとんどを占めていることがわかります。
2003年10/16〜11/15の間に福岡市(福大屋上)と大村市(4年生の自宅)で採取されたエアロゾル中の水溶性無機イオン成分の割合
フィルターによりサンプリングしイオンクロマトグラフィーで分析をした。
2.0ミクロンを境界として,大きい粒子を粗大粒子,小さい粒子を微小粒子として表示している。(2003年度卒業論文より)
大村と福岡の比較
長崎県大村市と福岡大学は背振山系で隔てられ,約100km離れています。下の図を見ると,2.0ミクロン以下の粒子の硫酸イオンとアンモニウムイオンの変動が2地点で非常に良く似ていることなどもわかります。この結果からは,福岡のエアロゾル中の硫酸イオンなどは,福岡自身ではなく,風上側の中国大陸などを起源として流れ込んできているものであることがわかります。
福岡市と大村市の微小エアロゾル中の硫酸イオン,アンモニウムイオン濃度の変動の比較
2003年度卒業論文より