ライダー(LIDAR)とは“Light Detection And Ranging”の略称で、レーザー光を使ったレーダーのことをさします。レーダーといえば電磁波を出してアンテナでその信号を検地するものですが、ライダーは電磁波の代わりにレーザー光、アンテナの代わりに望遠鏡を使っており、レーザーレーダーとも呼ばれています。
レーザー光のパルスを大気中に打ち出し、大気中の分子やエアロゾルに当てて返ってきた散乱光を受信望遠鏡で集め、それを光電子増倍管で電気信号に変換します。光電子増倍管とは微弱な光を増幅させ電気信号に変換するものです。
ノルウェースバルバール島に設置したライダー(写真上)
真ん中あたりに緑の線は上空に向けて出しえいるレーザー光。波長は523nm(1nmは百万分の1mm)。
いろいろなライダー
ライダーには観測目的に応じていろいろな種類のものがあります。代表的なもの幾つかを紹介します。
- レイリー・ミーライダー
エアロゾルと空気分子からの散乱光を測定し、その分布を調べます。エアロゾル粒子から散乱される光をミー散乱(Mie scattering)、分子から散乱される光をレイリー散乱(Rayleigh scattering)といい、これらを測定するのでレイリー・ミーライダーと呼んでいます。
レイリー散乱、ミー散乱ともに弾性散乱です。弾性散乱とは入射光(つまり照射するレーザー光)の波長と同じ波長の光の散乱をさします。
- ラマンライダー
大気中に含まれる窒素や水蒸気分子などから散乱されるラマン散乱を測定します。ラマン散乱とは入射光とは異なる波長の散乱光で、入射子に対して波長シフトした散乱光のことをさします。波長シフトは分子それぞれで異なるためその分子を特定することができます。また分子ひとつからの散乱光の強さもわかっており検地した光から分子の数もわかります。
水蒸気分子ですと波長523nmの光をあてたとき波長660nmの波長シフトした光が散乱されます。このラマンシフトを利用して大気中の水蒸気の観測がなされています。
ラマンライダーだけというのは少なく、ラマンライダーとレイリー・ミーライダーの複合型がほとんどで、これをラマンライダーと呼んでいる場合も多い。
- ドップラーライダー
ドップラー現象を利用しドップラーシフトした散乱光のシフト幅を測定するものです。ドップラー現象とは、お馴染みのもので、走る救急車から出るサイレン音の音程が高くなったり低くなったりする現象です。これが光でも起こります。散乱光を出すときその物体が移動していれば波長がシフトします。このシフトの幅を計ると物体の移動速度がわかります。これを利用して風の測定が行われています。