電子顕微鏡
電子顕微鏡とは、電子ビームと使って普通の顕微鏡では見えないすごく小さなものを見るための顕微鏡です。この顕微鏡を使って私たちは1000分の1mmくらいの空中を飛んでいる粒子を見ています。この顕微鏡で粒子を見るとその形がはっきりとわかります。
サンプル試料の周りを真空に近い状態にし、磁気レンズで焦点を定め電子ビームを試料に当てます。電子ビームをサンプル試料へ当てると、サンプルから2次電子が飛び出します。この2次電子を検出器で検知します。検知される2次電子の数はサンプルの表面の形状によって決まります。表面が山のようになっている部分からは多くの2次電子が放出され明るく写り、谷の部分かはそれらが少なく暗く写り、サンプルの像を再現できます。またサンプル試料へ電子ビームを当てたとき特殊X線が出ます。これを調べるとどんな成分なのかわかります。
環境制御型走査電子顕微鏡
通常、電子顕微鏡ではサンプルの周囲は真空に保たれています。電子ビームが空気分子によって散乱さらることを防ぐためです。しかし環境制御型の電子顕微鏡では、サンプルの周りを空気や水蒸気の気体で真空状態を保たなくともサンプルの観察ができます。つまりサンプルの周りを空気やほかの気体で満たしたままでもサンプルの観察ができます。
この環境制御型走査電子顕微鏡を使うとエアロゾルの凝結成長が観察できます。
NaCl粒子を使った実験
実験観察・分析方法
- チャンバー内の水蒸気圧を600Paに保つ。
- 粒子表面の温度を冷却ステージで変えることで相対湿度を調節する。
- 相対湿度は10%から100%の範囲で5%ごとに調整する。。
- 湿度変化に伴う粒子サイズの変化を観察する。
相対湿度10% | 相対湿度70% |
相対湿度60% | 相対湿度40% |
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相対湿度が低いと粒子は結晶構造をしている。 |
相対湿度70%を超えると周囲の水蒸気がくっつき大きくなっていく。 |
相対湿度70%以下に下がっても結晶には戻らない。 |
相対湿度40%以下になると再結晶し始める。 |
変化の特徴
- 相対湿度が70%以下の状態では粒子は結晶である。。
- 相対湿度が70%を超えると結晶に水蒸気がくっつき潮解が起こり、粒子は大きくなっていく。
- いったん潮解が起こると相対湿度70%以下になっても結晶に戻らない。
- 相対湿度40%以下になるとようやく再結晶し始める。
* エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X-ray Analyzer:EDX)
エネルギー分散型X線分析装置(EDX)とはESEMに付属されている装置で、電子顕微鏡での試料観察時に、電子ビームを当てた時に試料表面から発生する特性X線を検出して、その試料に含まれている元素の定性分析や定量分析を行うものです。
電子顕微鏡で試料を観察する際に、試料から2次電子、反射電子、特性X線などが発生します。EDXは、この特性X線を半導体検出器によって検出するものです。
特性X線が検出器に入射すると、そのエネルギーに比例した電子、正孔対が、検出素子内で発生します。これらをマルチチャンネルアナライザーによって各エネルギーに振り分け、スペクトラムとして表示します。このスペクトラムから、電子顕微鏡で観察している試料の定性分析や定量分析を行うことができます。
右の写真は海塩粒子(海水がはじけて発生した粒子)です。この粒子をEDXで分析した結果が下の図です。
分析の結果から海塩粒子(海水)の主成分であるナトリウム:Naと塩素:Clが検出されています。
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