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エ ア ロ ゾ ル

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大気エアロゾル

 空気の中に浮遊している粒子を一般的にエアロゾル粒子と呼んでいます。空気中には、粉塵、煙、ミスト、大気汚染物質など様々なものが浮遊しており、これらすべてをエアロゾルと呼びことができ、幅広く用いられています。粒子の粒径は、大きいもので0.1ミリ、小さいもので百万分の1ミリ程度のものまであります。
 エアロゾルは、生成の過程によって一次粒子と二次粒子に分けられます。一次粒子は、粒子として発生し、大気中に放出されたものをさします。海面から生成した海塩粒子や地上からの土壌粒子、火山活動によって発生する粒子などが一次粒子にあたります。二次粒子は、ガス状物質として放出されたものが、大気中で凝縮し粒子となるものです。大気エアロゾルの発生源は、土壌粒子や海塩粒子のような自然起源と、ばいじんやディーゼル黒煙のような人為起源とに分けることができます。自然起源粒子は破砕や飛散などの機械的な力により生成されます。一方、人為起源粒子は燃焼など凝縮過程を経て生成されるものが多い存在しています。大気中に排出されたエアロゾル粒子は、風によって輸送・拡散され、またの間に物理・化学的に反応し変質するとともに、慣性沈着または湿性沈着により大気中より除去されていきます。
 このような様々な過程で発生するエアロゾルは、大気環境や気候、人体に影響を及ぼしています。私たちの身近なものでは、大気汚染や地球温暖化、酸性雨、粒子状物質の吸引による人体の障害などが挙げられます。この他にも様々な影響が挙げられますが、エアロゾルのすべてが悪影響を及ぼすわけではありません。環境問題の原因となっているエアロゾルの多くは、化石燃料の燃焼や産業活動などの人為起源のものです。



大気エアロゾルの性状と化学的特性

 エアロゾル粒子の性状は、粒径、濃度、化学組成、形状、親・疎水性、反応性、光学的特性、電気的特性など多数の因子により表されますが、一般に粒径、濃度、化学組成が重要な因子となります。右の図は典型的な大気エアロゾルの個数、表面積、体積濃度分布を示したものです。大気エアロゾルは生成機構の異なる3つの粒子群、すなわち小粒子群(Nuclei mode)、大粒子群(Accumulation mode)、巨大粒子群(Mechanical mode)の集合体と考えることができます。個数濃度で表した場合、その大部分を占める小粒子群は、ガスから新たに生成した粒子で構成され、これらの粒子は他のガス分子の凝縮、粒子間同士の凝集により短時間内に中間粒子へ成長していきます。そして(小粒子群+大粒子群)を微小粒子、巨大粒子群を粗大粒子と呼ぶこともあります。大気エアロゾルの質量粒度分布は、通常1〜2μm(1μm=千分の1mm)付近を谷とし微小・粗大粒径域にそれぞれピークをもつ二山型分布となります。


 大気エアロゾル粒子の化学組成は、地域的にも時間的にも大きく変動します。わが国の都市域における長期平均的な傾向は、炭素成分が最も大きく20〜40%を占め、このうち元素状炭素と有機炭素の比はおよそ2:1です。SO42-、NO3-、NH4+など主として二次生成粒子よりなるイオン成分も20〜30%を占め、それらは季節的に大きく変動します。金属成分は10〜20%程度に過ぎませんが、発生源に関する多量の情報を含んでいることから、大気エアロゾルの挙動や発生源寄与などの解析においては不可欠な情報です。



大気エアロゾルの湿度特性

 大気エアロゾル粒子の湿度特性で重要となるのは、潮解性エアロゾルです。基本的に、相対湿度が高いと潮解性エアロゾル粒子は潮解し、凝縮成長をはじめ粒径は大きくなります。潮解性エアロゾル粒子には様々な種類があり、それぞれが異なった湿度特性を示します。この湿度特性は粒子の大きさの変化や雲や靄などへの成長の度合いを左右します。この雲の発生は太陽光の反射、吸収に影響を及ぼし、地球−大気系の熱収支への影響を評価するうえで重要になってきます。また靄の発生によって視程にも影響します。
 潮解は物質が空気中の水をとりこんで水溶液となる現象のことで、この現象を起こす物質の例として水酸化ナトリウムや塩化マグネシウム等がある。水溶液の濃度が一定の値に達すると水を吸収しなくなります。



ガス状物質によるエアロゾルの変質とNOxの粒子化

 春季の日本上空は偏西風の影響下にあって、そこに輸送されてくるエアロゾルにもアジア大陸の影響が強く反映されています。東アジア地域の急速な工業化に伴って放出されるSO2、NOxなどの汚染物質やそれらを前駆体とする硫酸、硝酸は、アジア大陸内部の乾燥地帯から飛来する土壌粒子や海から発生する海塩粒子と反応して粒子の変質が起こると考えられています(図)。この過程で海塩粒子からHClガスが揮散し、Clの損失(Cl-loss)を生じます。日本に移流する大気はこのような相互作用を起こしていると考えられ、さらに日本でもこのような変質が起こっていると考えられています。


NOxの粒子化は以下の2つ過程が競合的に起こっていると考えられています。
    ・海塩粒子・Carbonate鉱物粒子に対する吸着・吸収
    ・アンモニウム粒子(二次粒子)として生成
模式図を図に示しています。