背軸決定に関わる遺伝子の探索と解析

 

 母親に産み落とされた両生類の卵は、水中で受精し、発生を開始します。受精前の卵には動植物の軸しかありません。一方、両生類の背腹軸は、受精から第1卵割までの間に決定されます。植物極表層にある細胞質は、受精すると第1卵割が起きるまでの間に精子進入点と反対側に移動します。そして、移動した側でWnt シグナル系路を活性化し、オーガナイザー(背)を形成させます。つまり、精子が卵に進入した側が将来の腹、その逆側が背となります。

      

 景浦(1997, 1998)は、初期胚の背側表層細胞質を腹側赤道域に移植したとき、移植した側に2次の背軸が生じることを示しました。その他の実験からも、初期胚の背側表層には、背を決定する非常に重要な因子(背決定因子)が存在すると考えられています。この背決定因子は、胚の背側(オーガナイザー側)を決め、発生の進行に関わる多くの遺伝子発現パターンを支配する、極めて重要なマスター因子といえます。しかし、この因子がどのような分子であるかについては、良くわかっていません。

               

               背側表層細胞質移植による2次胚の形成

                

 我々は、この因子が背側表層にだけ多量に含まれる特別なmRNA分子種であると想定し、このmRNAをコードする遺伝子を探索・解析しています(日大・宮田研、九大・佐方研との共同研究)。これまでに、胚を背腹に二分割したとき、背側半胚で腹側半胚より多く含まれるmRNA分子種を2種類明らかにしました。現在、これらのmRNA分子種が本当に背腹軸決定に関わるものであるか調査を行っています。

 

              

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