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Research


研究テーマについて



 ミツバチはさまざまな感覚(嗅覚、聴覚、味覚、視覚)によって個体間コミュニケーションを行い、巣の恒常性の維持に努める。巣の5千から2万匹の仲間の生活を年間を通して維持するためには、効率的な採餌が必要不可欠であり、働き蜂は仲間に有効な蜜源のありかをダンスを通じて伝える。

中央のミツバチは、尻振りダンスにより蜜源への距離と方向を仲間に伝える。周りのハチは、ダンサーから蜜源の情報を得ようと集まってきている。
 
1、ミツバチのジョンストン器官の構造
 ミツバチの尻振りダンスの解読に関わる情報処理機構を調べている。ミツバチは巣内でダンス(尻振りダンスwaggle-dance)の際、音(振動を含む)によって仲間に蜜源の場所情報を知らせる。我々は音の受容器官である触角第2節にあるジョンストン器官の3次元構造を明らかにし、脳内の聴覚一次中枢の構造を明らかにした。
(原著論文はこちらをご覧ください).
(「分子昆虫学ーポストゲノムの昆虫研究ー」に執筆しました).


2、聴覚情報処理に関わる介在ニューロン
 ミツバチの聴覚一次中枢において分枝する介在ニューロンの応答特性と形態をしらべ、背側葉と食道下神経節背側領域に樹状突起をもつニューロンが、音の長さに依存して応答様式を変化させること、嗅覚刺激によってその応答様式が可塑的に変化することを明らかにした。
(原著論文はこちらをご覧ください).


3、標準脳を用いたニューラルネットワークの構築
 ミツバチのみならず、21世紀は脳の研究がさらに進み、意識や創造性など脳の高次機能のメカニズムも解明されていくのではないかと期待されている。我々はミツバチの脳内構造および脳内ニューロンのネットワークを標準脳を用いて仮想空間に再現し、ミツバチのコミュニケーションに関わる神経回路の解明を進めている。
(原著論文はこちらをご覧ください).


4、昆虫の聴覚情報処理機構
 多くの昆虫は遠隔通信のために音、振動を用いる。これらの情報は聴覚器官、および脳内でどのように処理され、解読されるのだろうか? 昆虫の通信に関わる受信機構と情報処理機構を比較することにより、その普遍性と種特異性を明らかにしていきたいと考えている。
(「動物の生き残り術:行動とそのしくみ」に執筆しました).


5、その他の振動感覚ー翅の辺縁部にある振動感覚子
 鱗翅目昆虫の翅の辺縁部には等間隔に剛毛がある。我々はこの感覚子が振動を受容すること、さらにこの感覚子は非常に狭い範囲の頻度の振動数に応答する特性を持つことを明らかにした。この感覚子は、はばたき振動のモニターや振動数の制御に関わっている可能性が示唆される。
(原著論文はこちらをご覧ください).


6、ミツバチの尻振りダンス解読に関わる神経回路の解明
 尻振りダンスの追従バチは、巣内の雑音の中から尻振りダンスによって生じる特徴的な時間様式の振動を検出し、蜜源へのベクトル情報を解読する。このしくみに関わる神経回路を明らかにした。
(原著論文はこちらをご覧ください).


7、尻振りダンス解読に関わる神経回路の適応的変化
 羽化後のミツバチは育児を行い、尻振りダンスコミュニケーションには参加しない。しかし、羽化後一週間後に採餌バチとして尻振りダンスコミュニケーションに参加するようになる。上記6の研究で明らかとなった神経回路が育児バチから採餌バチに成長する過程で構造的、機能的な変化をすることを明らかにした。
(原著論文はこちらをご覧ください).


8、音声、振動、嗅覚コミュニケーションを行う昆虫における脳内信号処理の普遍的機構
 昆虫は環境における匂い、音、振動の時間構造をコミュニケーションに役立てている。雄カイコガは性フェロモンの空間的分布から雌への距離を計り、雌コオロギは雄が奏でる求愛歌の時間構造により同種の雄を見分け、ミツバチは尻振りダンスの振動の時間構造により雑音の中から尻振りダンスの振動を聞き分ける。その情報処理に関わる神経回路には共通の普遍的なしくみがあることを明らかにした。
(原著論文はこちらをご覧ください).


8、その他、様々な昆虫を使った研究も行っています。

(その他の業績はこちらをご覧ください).